The Great Voyage Times -2ページ目

落とし物には福がある

[Notos 12日 Ubiq] 「この海には、いったいどれだけのものが沈んでいるんだろう」


 船乗りであれば、誰しも一度は考えたことがあるだろう。特に海賊の砲撃や大嵐で、莫大な財宝を海に投げ捨てざるを得なかった商人であれば尚更だ。最近までは海に流れてしまった物は二度と戻ってこないのが当然だったが、ここのところ冒険者から拾得物の報告が相次いでいる。


「どうも波間に何かあるなと思ってね。流された人だったら大変だと思って望遠鏡を持ち出したのさ。そしたらコレが」熟練冒険者のCさんは、そういって傍らの樽を指し示した。「これまで、こんなのが沈まずに浮いてるのなんて。まずなかったんだけどね」


 新技術の開発に余念のないロンドン工房によると、これは交易品を扱う樽の材質に変化があったためではないかという。


「樽は普通、堅くて丈夫なオーク(ユーロピアンオーク)を使うんだけどね。最近、場所によっちゃ新大陸で生えてるオーク(アメリカンオーク)を使ってるみたいなんだな」


 新大陸に広く分布するオークは、ヨーロッパのオークに比べて防水性に優れているという。そのため海に投げ出されても気密が保たれ、沈まずに浮かび続けるらしい。


「中に生き物でも閉じこめられてたらかわいそうだと思って必ず引き上げるようにしてるんだけど。でも中には砂や草ばっか詰まってたりするのもあるんだよ。何かの嫌がらせかね?」Cさんの見つけた樽の中には、海水が入った1オンス瓶がギッシリと詰まっていたという。「どうするかって? もちろん、樽の刻印で落とし主はわかってるからね。届けに行くつもりさ。何でこんなもんを落としたのか問いつめないと気が済まねぇし」


 確かに冒険者にとっては思いがけない「贈り物」かもしれないが、下手な恨みを買わないためにも、悪戯は程々に。

税関管理厳正化へ──「有益なる怠慢」の終焉(2/2)

(この記事はこちら の続きです) 翻って、今回の理事会決議案はそうした体制を根本的に覆すものであると言える。以下にその概要を記すことにしよう。

『本理事会は、税関監視員を欺き一部の交易品を不当に重用する交易の現状に鑑み、その不自然な状況を打開するために以下の決議を採択する。

一、売却時における理事会による評価基準を変更し、1品目ごとに上限を設け、評価の適正化を図る。

一、ただし上記の評価基準の変更は、商取引に価格面で影響するものではない。

一、税関監視員は現地交易港の人員ではなく理事会直下とし、専任の人員によって極めて厳重な監視を実施する。

一、税関監視が行われる期間は「相当期間」あるいは別の港へ寄港するまでとする。

一、税関監視員は各種理事会が付託する業務斡旋の仲介も行うこととする。

一、さらなる交易の活性化を目指し、買い付け上限枠を現在より増加させる。

一、上記の変更に伴い、従来品質管理のため原材料の相当数を該当ギルドに納めていた部分を大幅に軽減する。

一、理事会付託の業務遂行における報酬で配布されていた「発注書」の配布数を大幅に増加させる。

(「相当期間」の具体的日数、増加する数については「未だ審議中」とのこと)』


 これらを見て確認できる通り、今回の改正案はいずれも「抜本的改正」である。こうした改正を行うことを決定しながら、具体的な数値をなお発表しない理事会に対して、多くの商人は不安を隠せない。また、貿易機構理事会の強硬な態度に引きずられて、学業全般の依頼を斡旋する世界学術会議理事会、戦闘に関する依頼を斡旋する国際海上保安機構理事会も税関監視員に依頼の斡旋を委託し、事態はもはや商人のみで済まされるものではなくなっている。


 そのそもの改革の発端である交易に関しても、問題は山積している。

「下手なバランスでは、結局交易そのものが衰退し、生産もままならなくなる」と多くの商人は語る。また、今回の措置を「あまりに低い報酬と評価査定から無視されている理事会付託の雑務を、より一層強制させている」とする考えもあるようだ。


 また、新評価基準に対する不満も根強い。経済専門家は「一部産品が偏重される現在の評価基準の根本的修正がなければ、『儲かる単品』から『儲かる数品目』に変わるだけであり、表層的変化に過ぎない」と意見しており、「何よりも一部産品を偏重する理事会の評価機構の改革が必須」という。

 一方で、こうした新規定を歓迎する空気もある。「監視員の目を盗むような真似は良心が痛みましたし、今までの『無駄なことをやっている』という脱力感が軽減されます」とは、とある商人の弁だ。また、多くの専門家も「いずれは手をつけなければいけない改革」としており、とりあえず姿勢は評価する、という意見も多い。


 とはいえ、事前の綿密な調査や調整が必須となるこうした案件を、非常に安易に提出した理事会に対する不安は強いものがある。具体的なデータが全く出されていないことも、いたずらに各地の商人の不安を煽っているといえる。公平に判断して、理事会は冒すリスクに対して危機感も準備も足りないように思える。もし交易上限の拡大が不十分であれば、生産品の価格は上昇し一方で収入が減るという事態を招き、世界的な不景気が訪れる危険性があるというのに、そのような危機感はあまり感じられない。


 果たして、新規定は「有益なる怠慢」を上回る「有意義な勤勉」をもたらすことが出来るのだろうか。理事会の手腕が注目される。

税関管理厳正化へ──「有益なる怠慢」の終焉(1/2)

[DOL共同 10日 一英国記者] 各国政府が構成する国際会議に併せて開催された世界貿易機構理事会定例会議は、翌月より一斉に全世界における税関管理の厳正化を徹底するとの談話を発表した。


 現在、貿易協定では以下の条文が存在する。「近隣・遠隔地を問わず幅広く貿易を振興させるため、一度の寄港における取引量には上限を定め、それを以って商人をしてより多数の港へと寄港せしむるものとする」世界各地の商人に悪名高い、通称「制限条例」である。


 しかしこの制限条例には大きな穴があった。それは、税関管理の監視の目はおおよそ港から1日程度の距離までしか届かず、一度その監視範囲から離れた場合は「別の港に寄港した」と強弁することで、事実上連続した取引が可能となるのだ。これを利用して、各国商人は港から一定距離を離れては舞い戻るということを繰り返してきた。俗に言う「ブーメラン航法」である。


 もちろん一日程度で寄港して帰るなど不可能であるから、税関監視員はその気になれば相手の要求を退けられる。だが、それでも続くには理由がある。「交易を継続してもらうには、結局連続した取引が必要なのです。そうでなければ、売り上げが半減どころではありません」とは、こうした航法が盛んなとある港の交易所店主の弁だ。「真面目に上限など守っていては遠隔地交易も、生産も出来ない」とは多くの商人の声なき声でもある。こうして、税関では「有益なる怠慢」が続いてきたのだ。


 だが、こうした結果、交易所では一部交易品に人気が集中し、また近郊貿易が衰退して特定交易品を中心とした遠距離交易ばかりがもてはやされるようになった。

Zephyros ++ 新三国動向

[Zephyros 14日 一英国記者] ヴェネツィア・フランス・ネーデルランドという三カ国が海外貿易に積極的に乗り出してから一月を数えた。これらの国々の進出が始まったことで、先行していたイングランド・イスパニア・ポルトガルの三カ国は「新国家諸国」との外交問題という難しい問題を新たに抱えることとなった。

 今回は、9月14日現在での新国家諸国の現状といわゆる既存諸国との関連性を総括する。


●フランス

 新国家中、既存諸国からの亡命者のみならず、新しく船出する航海者たちも最多と噂される大国である。広い領土を持ち国内産物も豊富で、経済面での評価も高い。

 西地中海に臨むマルセイユを本拠とするため、同じく西地中海を根拠地とするイスパニアと競合関係にある。

 対外進出はポンディシェリを獲得したほか、サンジョルジュにも大きな影響力を持つ。近海ではトリポリを中心に西地中海に進出を始めており、今後はイスパニアとの本格的な衝突がありうると言われる。加えて、最近ではゴブラン織の売り場として東地中海のベイルート確保にも成功。その勢力は徐々に拡大を始めており、今後の去就が注目される。


●ヴェネツィア

 唯一東地中海に本拠地を置く国家である。その地理的優位性を生かしアンコナ・カンディア・ファマガスタの三都市を確保。ヤッファにも大きな影響力を有する。だが東地中海での金・宝石交易を大きな財源とするポルトガルはヴェネツィアに対して強硬な態度を示しており、一度陥落したヤッファを奪回している。加えてベイルートはフランスという予想外の勢力が介入する事態となり、今後はヴェネツィアも難しい舵取りを迫られていくことになるだろう。


●ネーデルランド

 イングランド首都ロンドンの、文字通り目と鼻の先に首都のある北海の国家である。その位置からイングランドとの衝突は避けられず、現在も多くの場所でイングランドと競争関係にある。

 対外進出はタマタブを支配し、カリカットに大きな影響力を持つなど、インド航路での積極的な動きが目立つ。それに加え、北海圏の近隣都市であるベルゲン・オスロ・コペンハーゲンにも一定の影響力を有しており、今後イングランドと北海の有力都市を巡ってのさらなる衝突があるものと思われる。


 当初こそ予想より影響が小さいとされた新国家諸国であるが、時を経るにつれてその影響力は大きくなっている。今後は、外交の舞台でもより一層新国家諸国の力が大きく作用することになるだろう。

Notos ++ 第6回大海戦前夜

[Notos 2日 gin] ポルトガルが選択した第6回大海戦の舞台はシエラレオネとなった。


 そう、シエラレオネである。


 思い起こせばイングランドとポルトガルの長い戦いの火蓋が切って落とされたのは、シエラレオネであった。北海を固めたイングランドと、アフリカ・インドにいち早く進出していたポルトガル。かねてから私掠行為が互いに繰り返され、険悪な状態になっていた両国は、ダイヤ発見の報に沸くシエラレオネで初めての投資戦をおこなったのである。


 ダイヤ利権を直接受ける大口の投資家から、愛国心に目覚めた一口投資家、そして投資行動を阻止せんとする両国の軍人が入り乱れて、ドゥカートと砲弾が飛び交った。シエラレオネ沖、いや世界全体が、はじめておこる大規模な国家間紛争のすさまじさを見せ付けられることになったのである。

 この戦いに勝利したイングランドは、アフリカ西岸のポルトガル同盟港を次々と攻略する。雪辱を期すポルトガルは第3回大海戦の舞台にアビジャンを選択したが、結果はイングランドの完全勝利に終わる。以後世界の情勢はイングランドの攻勢、ポルトガルの守勢という流れとなったのである。その後、ポルトガルとイスパニアが友好的な関係を築き、それぞれがイングランドに対したため、イングランドの攻勢は収束に向かった。同盟港の変動が最小限に抑えられた均衡状態が訪れていたのである。


 世界に新たなうねりが起きたのは、新たな国の参入であった。ヴェネツィア・フランス・ネーデルランド。まず最初にネーデルランドが国際政治の舞台に立つ。ネーデルランドがハンブルクを影響下に置こうとし、それと時を同じくして、ポルトガルがコペンハーゲンを、イスパニアがベルゲンを攻略したのである。この3国同時攻撃が計画された行動であったのか、たまたま時が重なったのか、記者は寡聞にして知らない。しかし、ハンブルク以外の二都市は攻略され、特にこれまで数度のポルトガルとイングランド間の争奪戦が行なわれていたコペンハーゲンはポルトガルが相当期間維持し、イングランドは追い詰められたかのように見えた。


 次いで、ヴェネツィアが東地中海に乗り出す。それまで東地中海に勢力を持っていたポルトガルは全面戦争は得策でないと判断したのか、ベイルート以外の諸都市の権益をヴェネツィアに渡した。ポルトガルの注意はアフリカ・インド方面のイングランド諸都市--サントメ・カーボヴェルデ・ディヴ・スエズ--などの攻略に向けられた。


 この間、活発な投資家の動きとは別に、各国の軍人たちは新たな船を用いた演習を活発におこなっていた。戦列艦とガレアスという砲撃と白兵のそれぞれ最高の船が各地の首都で建造が可能になり、訓練に日夜明け暮れていた。首都近辺海域での大演習には、一般航海者から通行の妨げになるとの苦情が出たほどである。


 そして、満を持してイングランドが牙をむく。カーボヴェルデ沖でイングランド私掠船団がポルトガル国籍の船を次々と襲い、次いで大規模な投資戦が行なわれ、失地を完全に回復した。ディヴとベルゲンは奪い返さなかったものの、ディヴはカルカッタ、ベルゲンはオスロという、より優秀な港があり優先度が低いとみなされたのであろう。


 さて、シエラレオネにおける大海戦。イングランドの攻勢の中、ポルトガルが大海戦をおこなうという構図はかつてのアビジャン戦と似ている。しかし、通常型のキャラックや小型のガレオンでの戦いではもはやない。船の大きさも砲種も砲門数も船員数も、そして各提督・船長の能力も当時とは比較にならないほど強力になっている。火薬と血の匂いがあふれる凄惨なものとなるだろう。


 この海戦の結果で両国のバランスが大きく傾くということはないかもしれない。両国とも人材にあふれ底力のある国であるからだ。海戦に敗れた方がずるずると後退するということは考えにくい。しかし、この海戦の結果が今後の新興3国を含めた世界の外交情勢に影響を及ぼす可能性は高いと思われる。


 世界中がこの海戦を固唾を呑んで見守っている。

Zephyros ++ 大海戦速報

[Zephyros 29日 一英国記者] 次回の大海戦の攻撃側となるポルトガルであるが、ポルトガル有力各紙の行った世論調査によれば、今回の投票では史上初の「静観」とする意見が有力であるという。

 ポルトガルが大海戦であえて「静観」を選ぶ論拠には、様々な根拠がある。


・連戦による疲弊(※1)

・将来における連戦の危険性

・攻撃側に有利な点が少ない


 何よりも大きな根拠は連戦による疲弊である。支援に回る商人組合の幹部はこう述べる。

「実際には大海戦の1週間前近くから準備に忙殺される。拘束される時間は大海戦中だけではない。物資輸送にも危険が伴うし、しかも原則として儲けは取らない以上、結局しわ寄せは多くの商人に行く。度重なる投資戦による消耗といい、末端商人の負担はもう限界に近い」

 誤解のないように言っておくが、彼は私が知る中で最も愛国的なポルトガル人の一人だ。だが、そんな彼をしても「連戦には限界がある」という語調が強いことには驚かされる。


 こうした意見の背景には、現在イスパニアとイングランドが係争中の港は少なく、再来月のイスパニア、その次のイングランドによる攻撃がともにポルトガル同盟港を対象とする可能性が高い、ということもある。つまり下手をすると4連戦どころか6連戦となる可能性もあるのである。


 それと同様に今回の厭戦機運の高まりを後押ししているのが、大海戦を運営する国際ルールの不備への不満である。

 語弊を恐れずに言えば、現在の大海戦で攻撃を行うメリットはない。いや、この表現は正確ではない。メリットがないのではなく、デメリットの方が大きいのである。大海戦は戦場が必然的に目標港付近となることから、補給・戦力の再編成という点で防御側が有利であり、また港周囲の安全海域の特性を生かす防御戦法も考案されている(※2)。一方、優劣は勝率によってのみ決定されるため、攻撃側は攻撃を行うという時点で非常に不利な立場に立っているのだ。そして目標都市への影響力の変動は攻撃側・防御側ともに平等となっている。これでは攻撃側は一方的に不利だ。

 もちろん対処法もある。それは彼我の出撃港の距離を短くして、せめて補給・補充における差を少なくすることだ。しかしこれでは、大海戦の投票候補とされる多くの港が「遠すぎる」という意味で事実上「死に候補」となってしまう。ただでさえ数少ない候補地がさらに減らされてしまうわけで、投票する側としては面白くない話である。

 結局、現状のルールで最も賢明な選択は、静観して相手の攻撃を待つことであり、有利な防御側で迎え撃ち、相手の影響力を奪い取ることだ、ということになってしまう。これでは静観が選ばれることも仕方のないことだと言える。


 今回の選択で問われているのは、単にポルトガルの外交問題だけではない。大海戦を巡るルールの是非もまた問われているのである。


 なお、ポルトガル当局は大海戦という軍人最大の祭典を国家的利害を優先して見送ることの代償として、大規模な模擬戦大会を予定しているという。


※1:ポルトガルは5月(カリカット)・6月(アンコナ)・7月(サンジョルジュ)と連戦が続いており、今回攻撃を行うとすると、4ヶ月連続の大海戦となる

※2:大海戦ルールでは、港周囲での交戦を禁じている。しかし友軍から援軍要請された場合はその限りではないため、安全な港周辺で味方艦隊が敵艦隊を誘引するのを待つ、という戦法が提唱されている。机上の空論だとも言われるが、専門家の見解は「実行には統制力が必要とされるが、実行できれば有効な戦法」という点で一致している

Zephyros ++ 終わりなき戦い──イベリア戦争

 セビリアからリスボンまで、彼我の距離は直線でおよそ350km(※1)。速度の速い船なら2日で着けることは、多くの航海者の方々もご存知であろう。だがしかし、現実においてセビリアとリスボンの間に横たわるこの350kmは、地上における他のいかなる350kmよりも遙かに遠い。


 この世界を動かしてきた確かな軸、それがイスパニアとポルトガルの対立である。一つの同じ半島に属し、さほど変わりのない言語を話し、人種的な相違は非常に少ない。だが、にもかかわらず──あるいはそれゆえなのか──両国の隔たりは埋める様子さえ見せず、8月23日現在も東部インドの有力港マスリパタムを巡って争っている。他の4カ国にとっては、両者のいずれに与するのかを決めることが外交方針となっているほど、二大国化が著しい。


 両者の対立の根は非常に深い。今回は簡単に両者の対立の歴史を振り返っていこうと思う。


●カサブランカ海戦(3月11日~13日)

 記念すべき第一回の大海戦の舞台となったのがカサブランカである。当時はまだ国際ルールの定式化が不十分で、略奪や暴言が横行し(※2)、攻撃側の不手際が目立った(※3)。ここでイスパニアは歴史的大敗を喫してカサブランカの影響度を完全に喪失。ポルトガルにその雪辱を果たすことを誓い、両者の長い戦いの火蓋が切って落とされることとなった。


●ケープ封鎖作戦(4月中旬~4月末)

 イスパニアは対ポルトガル作戦として、有力商会を中心とした私掠艦隊によるケープ封鎖を実施。しかし無差別な私掠行為は結果としてイングランド・ポルトガル両国からの大きな反発を呼び、ポルトガルによるケープ攻撃、イングランドによるカリビブ攻撃という最悪の事態を招いた。

 その後、イスパニアは長期戦の末にケープを奪回したが、国際的孤立を恐れて、以後は限定的な私掠にとどまることになる。


●カリカット戦役と外交転換(5月20日~22日)

 イスパニアは当時最大国家であったポルトガルに対抗するため、イングランドとの協力体制を模索。敵をポルトガルに絞るため、カリビブをイングランドに譲渡して投資戦を避けた。その後も紅海を除くイングランド領への攻撃投資を凍結し、カリカットでの大海戦でもイングランドを積極的に支援。

 結果、ポルトガルはカリカットで大敗し財源の一つであった香辛料貿易が後退。世界の趨勢はイスパニア・イングランド連合vsポルトガルという状況へ変化していくことになる。


●ルアンダ・ナポリ攻防戦(5月4日~28日)

 金や宝石による大きな利潤が知られるようになると、多彩な宝石を扱うルアンダ、金の需要が高いナポリがポルトガルとイスパニアの間で争点となってきた。極めて長期にわたる攻防戦の結果、イスパニアは両港の制圧に成功。この攻防戦が大きなターニングポイントとなり、以後、両国の戦いは「攻めるイスパニア、守るポルトガル」という立場が定着していくこととなった。


●アンコナ海戦(6月17日~19日)

 あらゆる意味でカサブランカ海戦の総決算をするため、イスパニアはついにポルトガルとの大海戦に臨んだ。誰しもが攻撃側のイスパニア不利を予想したが、緊密な連携と積極的な攻勢、さらに彼我の補給港の距離が近かったことから、イスパニアは大きな勝利を手にすることが出来た。この勝利によって、イスパニアはその富強を世界に強くアピールした。


●サンジョルジュ・アビジャン攻防戦(6月21日)

 ポルトガルにとって「悪夢の一夜」となったのが、この攻防戦である。当時のポルトガルはインド紡績・東アフリカ香料と並んで地中海での金交易が財政の三大支柱であった。だがその支柱の一つに、イングランドとイスパニアが同時攻撃を敢行したのである。

 ポルトガルはサンジョルジュに攻め入ったイングランドの撃退で手一杯であり、アビジャンは放棄せざるを得なかった。この一件からイングランド・イスパニアの両者には微妙な温度差が発生したが、ともかくもイスパニアはポルトガルに対して大きな勝利を手にすることができたのである。


●ポルトガル復興、モザンビーク攻防戦(大海戦・7月15日~17日、モザンビーク・7月23日~31日)

 不利につぐ不利。そして長引く国際的孤立。だが、それでもポルトガルはどん底から這い上がった。敗北を予期されていたサンジョルジュ大海戦での大きな勝利。そしてその後に発生したモザンビークでの攻防戦も、多数の人々を結集して防衛に努めた。その結果、大海戦・投資戦と連勝し、全世界にポルトガルが未だ強国であることを十分に示すとともに、国内の士気を大きく鼓舞した。


 現在、両者はマスリパタムを巡って一大消耗戦を展開しており、両者の対立を軸とした世界情勢は恐らく今後当分の間続くことになるだろう。だが、投資戦における関係と個々人の関係はまた別物である。筆者としては、両国家間の対立が両国の国民間の対立に発展しないことを願うばかりである。



※1:日本では京都・東京間に少し足りないくらいの距離。

※2:当時の大海戦には収奪に関する規約が存在しなかった。あまりの被害と抗議によって2回目以降の大海戦では、国際条約により収奪が禁止された。

※3:海域を移る際には艦隊を再編成するためにある程度時間を要するが、この不利は当時知られていなかったので、攻撃側は各個撃破された。当時の条約では5対1でも戦果として反映されてしまうため、大差での決着となった。

Zephyros ++ 「電撃戦」から「消耗戦」へ

[Zephyros 22日 一英国記者] 8月15日の未明から始まったイスパニアによるマスリパタム への投資攻撃により、マスリパタム はイスパニア同盟港へとその旗を変えた。イスパニアは新港実装時に目立った動きを見せておらず、その後の動向が注目されていた。


 イスパニアによる投資攻撃の候補としては、自国の宝石商が有効に活用できる英領セイロン が有力とされていたが、結局その矛先は生糸産出港の中で最優秀と言われるマスリパタム へと向けられた。関係筋によると、「セイロン 攻撃によってイングランドを刺激してしまい、その結果国際的孤立に陥ることを避けようとしたのでは」との推測がされている。


 幾度かの大規模な揺り返しの後、22日現在、ポルトガル優勢で状況は推移している。イスパニアは当初アビジャンと同様の「電撃戦」による決着を志向したようだが、ポルトガルの執拗な抵抗により状況が悪化。その後イスパニアは自然消耗を警戒して50:49の比率を守りつつ、相手が奪えば迅速な反撃を行うという作戦を展開していたが、そのため旗が簡単に変わる状況が続いてしまい、マスリパタム における攻防でポルトガルの反撃を許すことになってしまった。


 両者の対峙は今なお続いており、マスリパタム が第二のアビジャン となるのか、それとも第二のモザンビーク になるのか、今後の動向が注目される。

Notos ++ 新三国情勢

■快進撃続く=ヴェネツィア

 海外進出宣言直後、カンディア を攻略。そしてコショウに次ぐ人気香辛料であるジンジャー を産するヤッファ をも確保した。快進撃が続いている。総勢力はそれほど上昇していないものの、実権益では新三国の中で一歩抜きん出ている。マスリパタム 争奪戦が泥沼化する前に、早々に講和を結んだのが功を奏したか。


■ハンブルグ反撃を受ける=ネーデルランド

 昨日深夜よりネーデルランド唯一の同盟港ハンブルグ にイングランドの大量の資金が投入されており、10日現在でほぼ同率となっている。ネーデルランドは独立したばかりで領地が二港しかないだけに、どこまでイングランドの攻勢に対抗できるか。


■眠れる獅子は電気ウナギの夢を見るか=フランス

 その豊かな領地から新三国の中で最も実力があると思われていたフランスだが、現時点で海外攻勢は確認されていない。領地発展のため内政に力を注いでいるという情報もあるが、その内部情勢は謎に包まれている。

Notos ++ ハンブルグ陥落、英国窮地に

[Notos 8日 Ubiq] ネーデルランドの海外進出に伴いその前途が注目されていたハンブルグ だが、8日未明、大規模投資によりネーデルランド同盟となった。


 7日深夜に行われたネーデルランド商会連合の初会合では、やはり周辺に強大な影響力を持つイングランドとの関係をどうするのかが主な議題となった。遠交近攻という外交の基本原則に則り、地中海国家との結びつきを強め、北海への同時侵攻を行うべきだという対英強硬派。これに対し強大な軍事国家であるイングランドと事を構えるのは得策ではなく、北海は影響度調整外交によって共存するべきであるという対英共存派。意見は大まかにこの二つに分かれたが、最終的な意思統一には至らなかった模様。


 そのため今回のハンブルグ侵攻の明確な意図は明らかにされていないが、イングランドにとってみれば、北海でコペンハーゲン (対葡)、ベルゲン (対西)と三正面戦を強いられており、ネーデルランドが反英の立場を明確にしたならば非常に苦しい立場に立たされるのは間違いない。


 英国の主な産業は、鋳造、宝石、紡績だ。紡績商はインド方面で順調に勢力を伸ばしているが、北海を重視する宝石商はカリビブ奪還戦で失われた資産も未だ癒えておらず、英国に余力があるとの見方は非常に少ない。今後、英国はネーデルランドに対しどのような外交策を取るのかが注目される。