大砲が壊れやすくなった? | The Great Voyage Times

大砲が壊れやすくなった?

[Notos 26日 Ubiq] 「どうも最近、大砲の強度が上がっているみたいだ」。そういう情報が寄せられたのは昨年の暮れのことだ。それから各国では傭兵や造船所が中心となり大砲強度の検証が行われ、「やはり、強度は上がっている」という結論に達していた。どれだけ速射しても、敵の砲弾を受けたとしても、以前の数倍は壊れにくくなっているというのだ。


 原因は不明。しかし低い報奨金で海域の安全を守っていた軍人たちにとってみれば、朗報に他ならない。時代は白兵よりも砲戦に向かっており、ただでさえ出費が膨らんでいたのだから。一方、大砲の買い換え需要がめっきり少なくなり、原因がわからないまま廃業を余儀なくされる鋳造職人も続出していた。


 そんな混乱を巻き起こしていた大砲強度問題だが、ここにきてまた急に壊れやすくなっているという情報が寄せられている。


「前ほど? いや、前より全然壊れやすくなってるよ」そう頭を抱えるのは、最近喜望峰近海で傭兵を始めたJさん。「いや、前ほどでもないかな? でもさ、あれだけ頑丈だった大砲がまたバンバン壊れるようになっちまったんだよ。前より酷くなったような気になっても仕方ないだろ?」


 この原因について、ロンドン王立造船所では一つの仮説を立てている。


「大砲の原料は当然、鉄です。そして鉄の原料は鉄鉱石と石炭です。どうもその石炭の産地が影響してるように思えるんです」大砲の強度が変化したのは、使用する石炭の原産地を変えたのと同時だというのだ。「調べてみると、もろい鉄が出来る石炭は、近くに大規模な硫黄田もあるという共通点がありました。逆に堅い鉄が出来る炭田の近くでは、殆ど硫黄が産出しないんです。ただ、具体的に硫黄の何が影響してるのかはわからないんですけどね。だったら硫黄田から遠い産地の石炭に戻せばいいじゃないか、って声もあるんですが、もうそういった炭田は枯渇してしまったんですよ。元の、もろい大砲で我慢してもらうしかないですね」


 造船所では引き続き、強度と硫黄の関係について研究を続けるという。「なんとかして石炭で鉄鉱石を溶解させる段階で、硫黄分を取り除けないかと思っています。そうすれば、また元の強度の高い大砲が供給出来るようになるかもしれません」