マグロのオリーブステーキ、大流行の兆し | The Great Voyage Times

マグロのオリーブステーキ、大流行の兆し

 マグロのオリーブステーキといえば、赤く見える脂の少ない部分をフライパンでじっくりと焼き上げ、ナイフとフォークで切り分け、最高級のワインとともに食すという高級料理だ。船長はもとより、乾パンと安ビールで腹を満たす船員たちが口に入れられることなど滅多にない。ところが最近、このメニューが大流行の兆しを見せており、地中海近辺で釣れるマグロだけでは供給が足りず、遠く喜望峰沖まで漁に出かける船団まであるらしい。


 理由は調理法の変化にあったらしい。それは船乗りの生活に根ざした荒っぽいもので、脂が浮き出した白く見えるギトギトした部分を切り分けてそのまま火の中に放り込み、脂を落としてしまう。表面に焦げ目がついたらオリーブ油と塩を振りかけておしまい。お好みでコショウやジンジャーといった香辛料を添えるが、コリアンダー、ガーリック、ディルなどの廉価なものでも良い。ワインビネガーやホワイトビネガーといった酢も良くあうという。


 これまでは背の高級とされていた部分だけをとり、あとは捨てていたマグロ。いまや、一匹のマグロを余すところなく使い、船団の乗組員全員の胃袋を満たすだけの量が作れる。当然一匹当たりの料理量は増えて安価になり、下級船員たちの口にも入るようになったらしい。


 海の男達の最上のご馳走は、かつては甘いパウンドケーキで、今はオレガノ風味のクスクスになっているが、マグロのステーキがそれに取って代わる日は近いだろう。